世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、日本でも4月に緊急事態宣言が発令されました。多くの企業はその前後から人的接触を可能な限り避けるため、在宅勤務を中心としたテレワークへの移行等、ワークスタイルの変更を余儀なくされています。しかしながら、従来テレワークを導入しておらず、緊急避難的にテレワークに移行した企業では、様々なトラブルが発生しています。それは、道具だけは揃えた一方で、ツールの使い方や仕事の進め方等がテレワークに合っていないからです。
最近は緊急事態宣言が一部解除され、今後もその動きが拡大される傾向にあります。しかし、緊急事態宣言が解除されたとしても、すぐに以前のワークスタイルに戻ることは難しく、人的接触は継続して制限される期間がしばらく続くことが想定されます。さらに、新型コロナウイルス感染のいわゆる「第2波」「第3波」が発生した場合は、速やかに現在の様なワークスタイルに戻ることが必要となります。
新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同様、夏場に勢いが衰えるのであれば、そのタイミングで現在のテレワーク内容を見直し、今後予想される「第2波」に備える必要があると考えております。
テレワークの導入状況
企業におけるテレワークの導入状況について、地域限定になりますが、東京都が4月に緊急調査を実施し、先日その結果が発表されたので、その内容を紹介します。
まず、都内企業のテレワーク導入割合について、4月調査時点で調査対象の6割以上がテレワークを導入しています。3月での調査結果より2.5倍以上も増加しています。つまり、調査対象の約4割の企業がこの1か月でテレワークを導入したことになります。
これを従業員規模別に比較してみると、企業規模が大きくなるにつれて、テレワーク導入率も高くなっていることが分かります。特に従業員300人以上の大企業・中堅企業では、約8割の企業がテレワークを導入しています。一方で従業員30人~99人の小規模企業では5割程度の導入率ですが、見方を変えると、3月からの1か月で3倍弱に増加しており、急速にテレワーク導入が進んでいることが分かります。
テレワークを導入した企業でも、従業員のすべてがテレワークに移行したとは限りません。そこで実際にテレワークを実施する従業員がどのくらいの割合なのか確認したところ、平均で約5割となっておりました。昨年12月時点での調査では平均2割程度であったため、実際にテレワークを行っている従業員も大幅に増加しています。
同様に、営業日(約20日)のうち、テレワークを実施した日数について確認すると、4月は営業日の約6割でした。3月は約4日、12月は約1日であることから、テレワーク実施日はこの期間で約10倍に増えたことになります。一方で、均した数値ではありますが、営業日のうち約4割は、何らかの事情で出社しているのは、改善の余地があると考えられます。
最後に、業種別でテレワーク導入率を比較すると、比較的テレワークに移行しやすい事務や営業職が中心の業種(情報通信業、金融・保険業等)の企業では、約3/4の企業がテレワークを導入しています。一方、テレワークになじみにくいと想定される現場作業や対人サービスが中心となる業種(小売業、医療・福祉業等)の企業でも半分以上の企業がテレワークを導入しています。これは、業種や業務内容にも拠ると思いますが、業務自粛の動きの影響で経済活動が縮小し、従業者全員が出社する必然性が薄れたことも影響していると考えられます。
以上から、東京都内の企業において、企業規模や業種に関係なく、テレワークの導入は緊急事態宣言の発令前後で急増していることが分かります。しかし本来、テレワークの導入はきちんと時間をかけて対象業務を選定し、ITなどの作業環境や業務上の運用ルールを整備する必要があります。そのため、自宅にPCを持ち帰って、あるいは自宅にある私物のPCを使うことで、これまでと同じように業務を実施する、という安易な考えでテレワークに移行した場合、作業効率が落ちることは目に見えています。それ以上に問題なのは、セキュリティ上の課題が生まれている可能性があることです。テレワークを実現するため、セキュリティレベルを落とすような設定変更や機能追加を行った場合、ビジネス上の機密情報を狙うハッカーがその脆弱性を狙って社内ネットワークに侵入するのは目に見えています。
次回以降では、現状のテレワーク等の見直しを行うポイント等について確認します。
→「感染症対策としてのテレワーク等の見直し(2)テレワークを含む業務活動の見直し」
→「感染症対策としてのテレワーク等の見直し(3)感染症向けBCPの復旧フェーズ等」
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