作成日:2014/7/7

IT投資評価の必要性

今日、企業経営においてITは必要不可欠の要素です。あらゆる業務で業務プロセスに対応した情報システムが導入され、企業と企業、または個客とを結合するネットワークが構築されています。また、経営層や管理者が何らかの判断を行なう際には、膨大なデータを集計、分析したシステムレポートの支援を必要とします。そのため、ITの利活用を促進するためのIT投資判断は、将来の企業の事業活動を左右する大きな要因になると考えられ、実際に企業のIT予算は大きな割合を占めていると思われます。
一方で、企業の持つリソースは限りがあり、申請された案件に優先度を設定して投資判断を行わなければなりませんが、ITについては技術的な難解さや独自の用語などが多く、また導入効果との関連性もイメージしにくいことから、投資判断を行うことが難しいと考えている企業も多いと思います。
経営戦略や事業戦略に沿ったIT戦略を策定し、これに基づくIT投資がされることが基本なのですが、一方でPC端末やネットワーク、電子メールなど、一見経営戦略や事業戦略と結びつかない要素も投資案件として必要な対象となるところが、IT投資の難しいところだと思います。今回はその概要について、考え方の一つを提示しようと思います。

IT投資の動向

IT投資の考え方を説明する前に、過去10年程度のIT投資の動向を確認しようと思います。
まず、情報化投資額と設備投資に対する割合を確認してみます。総務省の「平成24年度 ICT の経済分析に関する調査」によると、2011年度における民間部門の情報化投資は約14.6 兆円(2005 年価格評価)で、その内訳はソフトウェア(受託開発及びパッケージソフト)がおよそ50%を占めています。情報化投資におけるソフトウェアの割合は過去10年およそ5~6割の範囲となっております。

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2008~9年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の影響で情報化投資額が前年を下回るときもありましたが、大きな傾向としては右肩上がりに上昇しています。また、設備投資全体に占める情報化投資の割合もほぼ上昇傾向にあり、2008年以降は設備投資全体の2割を超えている状況です。
それでは、今度は切り口を変えてみて、情報化投資の取り組み状況を確認してみます。経済産業省の「平成25年度情報処理実態調査報告書」によると、ここ数年は「新規システム構築」への取り組みは2割弱であり、全体の6割弱は運用中システムやインフラの維持管理に費やされています。

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また、先ほど2008~9年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の影響で情報化投資額が前年を下回ったことを確認しましたが、その対象は、同時期に落ち込んでいる新規システムの構築であると類推できます。
最後にIT投資の目的について、日本情報システムユーザー協会(JUAS)が毎年報告している、企業IT動向調査の2014年版を確認してみます。下記に示したのは、報告書から抜粋した上位10項目になりますが、ほとんどの項目はシステムの改修、または新規構築を必要とする内容になると考えられます。特に上位5項目については、順位の変動はありますが、過去数年変化のない事項となっております。

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また、第4位に「IT開発・運用のコスト削減」という項目がありますが、これはIT部門の業務に関しても業務プロセスと同様に効率化を求める姿勢の表れであると考えられます。
以上の統計情報から考えると、少なくとも過去数年は情報化投資が年々増加しており、かつその6割弱が現行システムの運用に費やされている一方で、経営課題解決を目的とする情報化投資は毎年2割弱~4割程度(システム保守の中で改善を図るケースも想定)しか割くことができず、課題に対して十分な投資ができていないために経年的に積み残されていることが伺えます。

IT投資の分類と投資評価の考え方(例)

それでは、IT投資評価について考えてみようと思います。IT投資評価については幾つかの考え方がありますが、今回はその一例を紹介しようと思います。
まず、IT投資について、様々な意見がありますが、概ね以下の表のように分類できると思います。

投資タイプ概要
戦略的投資新規事業の展開や商品力・顧客満足度の向上など、経営戦略や事業戦略にIT活用が不可欠な投資案件
業務改善型投資主に既存業務の省力化・効率化を目的とした情報システムの構築を中心とする投資案件
既存システムの保守フェーズにおける機能改善や制度対応等も含む
情報基盤投資社員のPC、ネットワーク、ストレージ等、全社の情報システムを支える機器、及びメール、グループウェア等の共通ツールに関わる投資案件

戦略的投資は経営戦略や事業戦略から導き出された施策の一環としてのIT投資案件となります。業務改善型投資は業務プロセスを支援する従来型のIT投資案件となります。これらの投資は主にアプリケーションを対象とします。一方、情報基盤投資は主にIT資産を対象とし、業務プロセスには直接現れない、個々の社員の使用する端末等のハードウェアやネットワーク、及び連絡手段としての電子メール等のソフトウェアが対象になります。
IT投資についてはその対象を、アプリケーション構築を目的とするITプロジェクトとIT資産の両面で考えることにより、それぞれのポートフォリオの最適化を目指します。ITプロジェクトは事業活動に影響を与える一方で、IT資産は製品の保守期間や減価償却期間といったライフサイクルに基づいて考える必要があります。

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ここで留意しなければいけないのは、ITプロジェクトとIT資産は相互に関連させなければならないことです。IT]資産であれば、単純に購入費用やサポート費用を計上するだけであればいいのですが、切換えやバージョンアップに伴う作業や開発が発生する場合はこれをプロジェクト化し、プロジェクトポートフォリオに組み込む必要があります。一方、新規システムの開発において特定の技術や要件を満たす製品の新規購入やバージョンアップが必要な場合は、これをIT資産のポートフォリオに組み込み、今後の費用計上に反映させる必要があります。こうして相互を関連付けながら、ポートフォリオ評価を行うことで全体の最適化を目指すことになります。

それぞれのポートフォリオ評価については、また改めて記載することとします。

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