作成日:2014/6/11

企業や組織において情報システムやIT/ICTの重要性が高まるにつれ、ITマネジメントという言葉が注目されてからかなりの年月が経ちました。一方で、ITマネジメントについて明確な説明ができなかったり、当事者間でイメージする内容が様々だったり、というケースが多いのが現実ではないでしょうか。例えば、表示されている通り
「ITを管理すること」
もう少し詳しい説明であれば、
「ビジネス戦略と整合の取れたIT戦略を策定し、その内容を実現する」
「情報システム環境に対してPDCAサイクルを適用し、継続的な改善活動を実施する」
・・・
といった内容になるのでは、と思います。
今回は私なりに取り纏めたITマネジメントの概要についての一例を提示しようと思います。
 

そもそもマネジメントとは

ITマネジメントの説明を始める前に、マネジメントとはそもそも何なのでしょうか。マネジメントは単純に和訳すると経営や管理作業、あるいはその担い手である経営者、管理者とになりますが、これですべてを説明できているのでしょうか。マネジメントと言えばP・F・ドラッカーの名が思い浮かびます。ドラッカー自身もマネジメントの定義に苦労したようですが、以下のように述べています。
「組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関がマネジメントである」
(P・F・ドラッカー著、上田惇生訳『明日を支配するもの』 (1999年、ダイヤモンド社) P45)
ドラッカーはあらゆる組織が社会の機関であり、社会やコミュニティ、または個⼈の特定のニーズを満たすために存在すると考えています。つまり、このニーズを満たすことが組織のミッションであり、ミッション達成のために存在するのがマネジメントだとしています。

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この組織を企業として考えた場合、企業のミッションは社会、コミュニティや個⼈のニーズを満たすことになります。企業がニーズを満たす社会、コミュニティや個人を顧客と考えると、企業は顧客のニーズを満たし続ける存在となります。言い換えると、「顧客の創造」が企業の目的だと考えられます。そして、この目的達成のために企業が持つ基本的な機能は、顧客が既に持つ欲求を満足させる「マーケティング」と、新しい欲求を創出し満足させる「イノベーション」としています。この2つの機能の成果、すなわち企業の成果を左右する「生産性の向上」を担う管理的機能が必要だとしています。ここでの「生産性の向上」とは資源(物的資源・人材・資金)の有効活用を意味します。
以上がマネジメントの適用範囲であると考えられます。

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ドラッカーの考えに基づくITマネジメントの考え方

それでは、このドラッカーのマネジメントの考え方に基づいて、ITマネジメントを定義づけるとどのようになるでしょうか。
ITマネジメントの主体はIT部門です。事業部門は企業にとっての顧客創出に関する活動を行うことから、IT部門は事業部門の顧客創出に関わるニーズを満たし、成果や評価を獲得することになります。事業部門にもそれぞれの事業マネジメントが存在するので、そのニーズは顧客に対する製品やサービスの提供ばかりでなく、企業全体や事業部門の管理的機能に由来するニーズも含まれます。
IT部門の成果をあげさせるのがITマネジメントになります。その機能を見ると、マーケティングは事業部門のニーズを発掘し、ITを活用した効率化、高度化、多様化等の対応であると考えます。イノベーションは、ITを活用した新しい事業モデルの創出だと考えられます。(必ずしも新技術の開発や採用という訳ではないということに留意ください。)そして、管理的機能はITに関わる資源の有効活用であると位置づけることができます。

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特にIT部門においては、外部の顧客とは切り離されている関係上、なかなかマーケティングやイノベーションの機能による積極的な発信ができず、要望を受ける一方で管理的機能に専念する活動が行われてきたと思います(図中の赤い矢印)。近年IT部門に期待されているのは、ビジネスパフォーマンスの向上や新しいビジネス創出に向けた積極的な提案といった活動、すなわち、マネジメント上のマーケティングやイノベーションの機能を含めた活動にほかなりません(図中の緑の矢印)。

 

ITマネジメントの管理的機能(例)

ITマネジメントにおけるマーケティングやイノベーションの機能はそれぞれの企業の実施する事業との関わりが大きいので、今回は管理的機能を中心に説明を続けます。
ITマネジメントにおける管理的機能の内訳について、管理対象や管理主体の見方によって様々な考え方がありますが、ここでもその一例を提示しようと思います。

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まず、ITマネジメントのグランドデザインとなるIT戦略を構築する機能が存在します。このIT戦略は企業戦略や事業戦略と整合すると同時に、全体的なITアーキテクチャ、予算配分、人的配分等も含まれます。
この策定されたIT戦略に基づき、ITリソースごとの管理的機能があります。IT投資管理機能はITプロジェクトの優先順位や予算規模、投資効果等の管理を行います。ITアセット管理機能はITインフラに関わる機器やサービスについて、技術動向やサポートサイクルを考慮したアーキテクチャ選定や導入・更新等を管理します。IT組織管理機能はIT部門のミッションに基づく自社対応業務と外部委託業務との切り分け、IT部門の組織構成と要員配分、及び教育等の管理を行います。さらに、ITリソースと並行して存在するITリスク管理機能はセキュリティ等のIT関連リスクを洗い出し、評価分析し、対応策構築等の管理を行います。最終的には個々の管理機能はIT評価機能に集約され、その結果は次のIT戦略に反映されます。
以上がトップレベルのマネジメント機能であり、この下にプロジェクト管理やサービスデリバリ管理、ベンダー管理といった個別の管理機能が付随します。

今後は上記の管理機能について、順次に紹介しようと思います。

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