2015/3/27

ネット上の記事を眺めていたら、「買い物弱者」(または、「買い物難民」)という言葉が目に留まりました。どういうものか調べてみると、

「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買物が困難な状況に置かれている人々のこと。」(経済産業省ホームページより)

とありました。

原因は主に少子高齢化や過疎化に伴う、近隣の商店街の撤退や移動手段の制限(自動車の運転ができない、公共交通機関の路線廃止や本数減少、等)であり、現時点の国による推計では約600万人とされているようです。

実はこの「買い物弱者」、地方だけではなく、都市部の問題でもあります。高度成長期に建てられた公団住宅等に居住する方々が高齢化する一方で、近隣の商店が閉店してしまい、日常の買い物に苦労するケースが増えているようです。

以前は鉄道の駅を中心に商圏が成立していましたが、自動車社会の発展に伴い、集客能力に優れたロードサイドの大型店に商圏がシフトしてしまった結果、古い商圏で移動手段の無い方々は「買い物弱者」となってしまったようです。私も仕事の関係で郊外(といっても、23区内です)を訪れることもありますが、ここ数年は、商店街を離れると日中に外を歩く人が減っている、場合によっては誰も歩いていないと感じることが増えた気がします。

また、買い物の対象となる日用品の変化も要因の一つではないでしょうか。例えば水やお茶などの大容量のペットボトル飲料を移動手段の無い方が購入して持ち帰るのは非常に大変なことだと思います。

こうした状況を解消するため、国や自治体は様々な施策を実施していますが、決定的な解決策とは言えない状況です。対策内容は大別して、

  1. 店を作ること
  2. 商品を届けること
  3. 人々が出かけやすくすること

となっています。ただ、1.と3.は元々採算が取れないという理由で撤退しているので、補助金等の支援が終わっても継続できるよう、色々と工夫をしなければいけないと思います。2.については、ネット上で商品を選択し、宅配するサービスもありますが、配送区域に制約がある、等の課題があります。また、そもそも買い物弱者とデジタルデバイドの該当者は重なっているように感じるので、インターネットを活用したサービスにも限界がありそうです。

以前、何かの番組で、いわゆる町の電気屋さんが、顧客サービスの一環で買い物代行等を無償支援することで、固定した顧客を囲い込み、年商で10何億円?(記憶が定かではないです)を実現しているという事例を見たことがあります。家電店側としては外回りの営業や出張修理の合間に対応することで、それほど負荷になるとは考えていないようです。一方で顧客側からすると、この家電店では定価販売なので量販店に比べて割高なのですが、こうしたサービスを享受できるということで、この家電店から継続して電化製品を購入しているとのことでした。

「情けは人の為ならず」と言いますが、こうした地域の問題に取り組む姿勢が、結果として本業に結果をもたらすような仕組みというのは、効率性や収益性ばかり見ていては思いつかないでしょう。今後のビジネスを考える上での参考になるように感じます。

参考
経済産業省、「買い物弱者対策支援について