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―――>「危機管理マニュアル策定のポイント(1)-概観
―――>「危機管理マニュアル策定のポイント(2)-緊急時体制の役割等
―――>「危機管理マニュアル策定のポイント(3)-緊急時体制の構成等

今回は危機管理マニュアルを構成する要素のうち、「初動対応」に関する検討ポイントを確認します。

初動対応プロセス概観

緊急時における初動対応プロセスの概要は以下の通りです。緊急事態を検知した後、迅速に状況を把握した上で必要な対策を実施します。
初動対応プロセス概観

警戒活動
緊急事態の発生が予測された場合は、迅速に対応できるよう警戒態勢を敷きます。緊急事態を顕在化させないための活動、あるいは緊急事態が起きても被害を最小化するための活動を行います。

緊急事態の検知
緊急事態が発生したことを認識した担当者や部門は、規定された手順に従って危機管理担当者に報告します。一般の報道やSNS等、外部の情報によって検知された場合は、危機管理担当者が対象部門に状況を確認します。

緊急時体制の招集
危機管理担当者は緊急事態検知の第一報に基づき、緊急時体制を招集します。また、一般の報道やSNS等、外部の情報に基づき明らかに緊急事態になることが想定される場合は、緊急時体制のメンバーは連絡を待つことなく、自発的に参集することも必要です。

状況の検証
第一報後も危機管理担当者は継続して情報収集を行い、状況の把握に努めます。緊急事態が発生した現場と連絡が取れない場合は、可能であれば現地に担当者が赴き、状況を確認するという判断も必要です。

緊急事態の宣言
発生した事象に関する情報が十分に収拾できなくても、社会的な影響が拡大すると判断できる場合は、緊急事態に入ることを宣言します。社内の各部門や外部の関係者に対して、緊急事態に入ったことを伝達します。

緊急時活動への移行
緊急事態を宣言することにより、あらかじめ決められた緊急時のプロセスに移行します。緊急事態の影響を受けることなく業務継続可能な部門は、通常通りの業務を実施します。

エスカレーションフローの明確化

緊急事態を検知してから実際に緊急時体制に移行するまで、幾つかのエスカレーションポイントを経由することになります。「緊急事態が発生したら危機管理チーム/危機管理担当管理者に連絡する」という案内をよく見かけますが、企業風土等の要因から、一般社員が直接危機管理チームや危機管理担当の管理者に連絡することに躊躇する状況もあります。そのような場合は、連絡の躊躇による時間の浪費を避けるため、連絡しやすい相手に迅速に連絡させるようなエスカレーションフローを構築すべきです。以下にエスカレーションフローのイメージ例を提示します。
エスカレーションフローのイメージ(例)

緊急事態宣言と緊急時体制への移行

緊急事態宣言は、組織全体として緊急時体制に移行するための重要なプロセスとなります。この緊急事態宣言によって組織全体が通常業務から緊急時の対応や代替業務に移行します。言い換えれば、この緊急事態宣言が発せられるまでは勝手な判断で緊急時対応を行わず、基本的に通常業務を継続することになります。緊急時の対応を実施するための検討は緊急時体制が主体となりますが、最終的な判断については経営者、またはその代理が実施することになります。緊急時体制に経営者が参加する場合は、緊急時体制の決議がそのまま緊急事態宣言となります。
緊急事態宣言の発動プロセス(例)

情報収集と整理

初動対応において重要な活動の一つが、緊急事態に関する情報を収集し、整理することです。緊急事態の発生を検知した部門や担当者に対しては、引き続き情報収集を継続させるとともに、新聞やテレビニュースなどの報道、取引先や一般顧客からの情報提供、SNS等での発信内容等、様々な情報ソースから情報収集を行います。収集した情報は、その内容や確度によって分類した上で整理することが必要です。情報を分類する区分は、以下の通りです。

1.確認情報:情報の内容について確認が取れ、確定された情報
 a.公開情報:対外的に公開可能な情報
 b.社内限情報:社内のみ公開可能な情報
 c.非公開情報:関係者以外は非公開の情報
2.未確認情報:情報の内容に憶測が含まれている、または確認が不十分な情報

情報の整理については、あらかじめ定型のフォームを準備し、これに書き込み、更新することで整理していきます。この内容を基にして、プレスリリースや問合せに対する回答を作成することで、不整合を起こさずに情報発信を実施することが可能となります。
情報収集と整理イメージ

次回は「情報発信」に関する検討すべきポイントについて確認します。
―――>「危機管理マニュアル策定のポイント(5)-情報発信

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