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—>「マイナンバー制度、変更情報の確認(1)」
今回は前回に引き続き、マイナンバー制度の変更情報を確認していきます。今回は10月28日に大幅に追加・変更された国税庁のFAQのうち、「番号制度」「本人確認」「法定調書」に関する各FAQについて紹介します。
※今回紹介した内容は2015/12/1時点の公開情報に基づいており、今後変更等が発生する可能性があるので、ご留意ください。
国税庁、「番号制度概要に関するFAQ」の変更状況
国税庁の「番号制度概要に関するFAQ」では、「(3)その他」の分野において数件のFAQが更新されています。
(以下、「番号制度概要に関するFAQ」に基づき作成)
Q3-3 法定調書の提出が不要とされている金額以下の支払金額であるため、税務署等に法定調書の提出義務がない場合であっても、個人番号の提供を求める必要がありますか。
法定調書を提出しないことが明らかである場合は、個人番号関係事務は生じないことになるので、個人番号の提供を求めることはできない、とあります。つまり、法定調書の提出要否を確認の上、必要ならばマイナンバーを収集しなければならない、ということになります。
ただし、年の途中で雇用契約を締結したため、入社年の法定調書の提出は不要である一方で、雇用契約が継続することを前提に翌年以降は法定調書の提出が必要な場合は、マイナンバーの収集は可能だとしています。
Q3-6 番号法施行後、顧客との個人番号を含む資料のやり取りについて、従来どおりPDF等のデータを読み込みし、メールの添付資料としてやりとりしてもよいですか。
必要かつ適切な安全管理措置を条件に問題ない、とのことです。この場合の具体的な安全管理措置として、添付資料はパスワードを設定し、別メールでパスワードを送付する、といったことが考えられます。
Q3-9 個人番号の指定を受けた者が、国外へ転出をした後に帰国した場合、出国前と同じ個人番号が指定されますか。
一旦個人番号が指定された場合は、その後国外へ転出をした後に再び帰国しても、マイナンバーが変更されたり、新規付与されたりすることはありません。
なお、個人番号を付与された者が国外へ転出する場合、通知カードまたは個人番号カードを市区町村長へ返納する必要があります。海外転勤する従業者がいる場合にはこのことを伝達する必要があります。返納したカードは市区町村長が失効した旨を表示の上、国外転出者へ還付されます。(平成26年総務省令第85号第32条)
Q3-10 海外勤務者等の個人番号を会社等のデータベースで保管してもよろしいですか。
帰国することが予定されており、個人番号(マイナンバー)を帰国後の源泉徴収票作成事務等で利用することが予定されている場合などの必要性があれば、継続して保管することは差支えない、としています。
国税庁、「本人確認に関するFAQ」の変更状況
国税庁の「本人確認に関するFAQ」では、「(2) 本人確認(国税庁告示)」の分野において1件のFAQが更新されています。
(以下、「本人確認に関するFAQ」に基づき作成)
Q2-10 事業者から交付される源泉徴収票等を、国税に関する手続における本人確認書類として使用することはできますか。
こちらについては「マイナンバー制度、変更情報の確認(1)」で紹介した通り、平成27年10月2日に所得税法施行規則等の改正が行われ、従業員等に交付される源泉徴収票などには個人番号(マイナンバー)の記載を行わないこととなりました。このため、源泉徴収票を本人確認手続における番号確認書類として使用することはできません。一方、身元確認書類としては使用することが可能です。
上記の所得税法施行規則等の改正前に作成され、公開されている資料には、番号確認書類として源泉徴収票が使用できる、という記載が残っている可能性があるので、ご注意ください。
国税庁、「法定調書に関するFAQ」の変更状況
国税庁の「法定調書に関するFAQ」では、全体的に多くの件数のFAQが更新されています。
(以下、「法定調書に関するFAQ」に基づき作成)
(1) 法定調書関係(総論)
Q1-5 当初、個人番号の提供が受けられなかったため法定調書に個人番号を記載せずに提出し、その後になって個人番号の提供が受けられた場合には法定調書を再提出(無効分・訂正分を提出)する必要はありますか。
個人番号(マイナンバー)は住所や氏名と同様に法定記載事項のため、個人番号の記載が無い法定調書は法定記載事項を満たしていません。そのため、法定調書提出後に個人番号(マイナンバー)の提供を受けた場合は、原則として再提出する必要がある、としています。
しかし、個人番号(マイナンバー)以外の事項が正しく記載されている場合、再提出をしなくても差し支えないとしています。その場合は税務署から確認があるかもしれないので、個人番号が取得できなかった経緯を記録するとともに、次回以降の法定調書には当該個人番号を確実に記載するよう、留意する必要があります。
Q1-6 支払を受ける方から番号の提供が受けられなかった場合、番号を記載せずに法定調書を提出することとなりますが、その場合、摘要欄に何か表示する必要はありますか。
番号の記載がない理由を摘要欄に記載する必要はありません。
ただし、Q1-5と同様、記載できなかった理由等を記録する必要があります。
Q1-7 法定調書を提出した後に、個人番号が変更された方について、変更後の個人番号により再度法定調書を提出する必要はありますか。
法定調書を作成する日の時点での個人番号(マイナンバー)を記載して提出することになっているので、その後個人番号(マイナンバー)が変更された従業者がいても、再提出する必要はない、とされています。
一方、個人番号(マイナンバー)が変更された後に作成、提出する法定調書には、変更後の個人番号(マイナンバー)を記載しなければなりません。
Q1-8 提出基準に満たない金額の法定調書を作成し提出する場合に、番号を記載する必要はありますか。
質問の内容の場合、税務署に提出する法定調書には支払者や支払を受ける方の個人番号(マイナンバー)、または法人番号を記載する必要があるとのことです。
なお、金銭の支払時等に法定調書を提出しないことが明確な場合は個人番号を取得すること自体が認められません。(「番号制度概要に関するFAQ」 Q3-3参照)
Q1-9 法定調書の提出漏れが判明し、過去の分の法定調書の提出が必要となった場合、個人番号又は法人番号を記載して提出する必要はありますか。
対象となる法定調書の記載範囲に関係します。番号法が施行される平成28年1月1日以後の金銭等の支払等に係る法定調書の場合、個人番号、または法人番号の記載が必要です。
一方で、平成27年12月31日以前の金銭等の支払等に係る法定調書の場合は、提出が平成28年1月1日以後でも個人番号、または法人番号を記載する必要はありません。
Q1-10 平成27年分の法定調書を平成28年1月1日以後に提出する場合、新旧どちらの「レコードの内容及び記録要領」を使用するのですか。
平成28年1月1日以後に提出する法定調書であれば、新しい「レコードの内容及び記録要領」によって提出することになります。
また、平成27年12月31日以前の金銭等の支払等に係る法定調書を光ディスク等により提出する場合には、現行の「レコードの内容及び記録要領」による提出でも差し支えないとのことです。
なお、新しい「レコードの内容及び記録要領」により平成27年分の法定調書を提出する場合、番号欄は何も記録せず、空欄として提出することになります。
Q1-12 3年間の猶予規定が設けられている法定調書について、支払者(法定調書の提出者)の番号の記載も猶予されますか。
3年間の猶予規定は、支払を受ける方の個人番号、または法人番号の告知、および記載が対象であって、支払者(法定調書の提出者)の番号記載は対象外のため、猶予されないことになります。
Q1-13 利子等の支払調書に関して、3年の猶予規定が設けられていますが、平成28年1月1日以後に取引を開始した場合は猶予規定の適用はありますか。
平成28年1月1日以後、新たに取引を行う場合などは猶予の対象にはなりません。
法定調書を提出する場合は支払を受ける方から番号の告知を受け、当該番号を記載して提出する必要がある、とされています。
(2) 法定調書関係(給与所得の源泉徴収票)
Q2-1 給与所得の源泉徴収票は、どのように変更になりますか。
所得税法第226条第1項に規定されている給与所得の源泉徴収票は、平成28年1月1日以後に支払う給与等に係るものから新様式となり、以下の項目の記載が必要になります。
・給与等の支払を受ける方の個人番号
・控除対象配偶者の氏名と個人番号
・控除対象扶養親族の氏名と個人番号
・給与等の支払をする方の個人番号または法人番号
ただし、給与等の支払を受ける本人に交付する給与所得の源泉徴収票に限り、平成27年10月2日の所得税法施行規則等の改正により、個人番号の記載は不要となりました。
Q2-4 現在、年末調整を行っていない場合、扶養親族の氏名は記載していませんが、番号制度導入後も、源泉徴収票に扶養親族等の氏名や個人番号を記載しなくてよいですか。
番号制度の導入後は、年末調整を行っていない場合も控除対象配偶者や扶養親族の氏名を記載する必要があります。また、税務署提出用の源泉徴収票には、控除対象配偶者や控除対象扶養親族の個人番号を記載する必要があるので、ご留意ください。
(3) 法定調書関係(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)
Q3-1 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の写しを、本人に交付する際には、法人番号及び個人番号を当該調書に記載してもよいですか。
現行の所得税法上、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書は本人交付義務がありません。よって、報酬等の支払調書の写しを本人に交付する場合は、番号法19条の特定個人情報の提供の制限により、個人番号を記載することはできないことになります。
Q3-2 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書について、提出省略基準を超えると判断できた場合に番号を収集する予定ですが、それでよいでしょうか。また、収集したが結果として調書の提出が不要になった場合、廃棄作業を行うまでの期間はどの程度許容されますか。
前者の質問については、提出の要否が判断できた段階で個人番号を収集することで問題ありません。
後者の質問について、収集した番号が不要となった場合は、定期的な廃棄作業等の通常の事務手続きでの廃棄のタイミング等、個人番号(マイナンバー)や特定個人情報の保有に係る安全性や事務の効率性等を勘案して適切に対応すればよい、されています。
制度上は不要であることが判明した時点で廃棄することが望ましいと考えられますが、日常業務の状況から都度の廃棄作業が煩雑になる事業者であれば、従業員等のマイナンバーを廃棄するのに合わせて対応することも可能と解釈できます。なお、廃棄までの期間は当該マイナンバーや特定個人情報は廃棄対象だとしても、適切な安全管理措置にて保管する必要があります。
(4) 法定調書関係(不動産の使用料等の支払調書)
Q4-1 共有持分に係る不動産の使用料等の支払調書は、共有者全員の個人番号(法人番号)を記載する必要があるのですか。
共有持分に係る不動産の使用料等の支払調書は、現在、共有者の各人ごとに作成することとされており、マイナンバー制度が導入された後も変わりません。従って、番号制度導入以降は各人ごとに作成した支払調書に、各人の個人番号、または法人番号を記載して提出することとなります。
また、それぞれの共有持分が不明な場合には、総額を記載した支払調書を共有者の枚数分作成しますが、「支払を受ける者」の欄は、共有者連名ではなく各人ごとに記載します。摘要欄には、以下を記載して提出します。
1.「共有持分不明につき総額を記載」
2.他の共有者の数
3.他の共有者の氏名と個人番号、または法人名称と法人番号
Q4-2 平成27年中に不動産の賃貸借契約時に個人番号の提供を受け、平成29年1月に不動産の使用料の支払調書を提出するときには、再度本人確認措置が必要ですか。
平成27年に個人番号の提供を受けた際に本人確認措置を行っていることから、再度本人確認を行う必要はありません。
次回は国税庁、「源泉所得税関係に関するFAQ」の変更状況について確認します。
マイナンバー制度は今後もこうした細かな制度改正等が随時行われることが想定されます。担当される方々は随時関係省庁のマイナンバー関連情報を確認し、タイムリーに更新状況を把握することが必要だと考えます。
以降の内容はこちら
—>「マイナンバー制度、変更情報の確認(3)」
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