作成日:2015/8/13
更新日:2015/9/7
2015/12/7

2016年1月に開始される「社会保障・税番号制度」(以下、「マイナンバー制度」)の対応に向けて、各事業者では様々な作業を進めていることでしょう。
マイナンバー制度の開始に先駆けて、10月からマイナンバーの通知が始まり、この時点から各事業者は従業員等のマイナンバーを取得することが可能となります。なお、マイナンバーの取得の際には厳格な本人確認を行う様、強く求められています。
マイナンバーを含む特定個人情報の取扱いについてはガイドライン等に記載されている内容に準拠することになりますが、事業者の事業規模や事業環境、従業員等の状況などの要因を踏まえて、個々の企業で個別に詰めなければならない要件もあります。
今回は現時点で公開されている情報に基づき、事業者における従業員等のマイナンバー取得に関する注意点等について確認します。

※2015/12/7追記
ここ数か月、制度改正やFAQなどの更新が相次いでいます。12月初頭時点の更新情報を取り纏めたので、併せてご確認ください。
・「マイナンバー制度、変更情報の確認(1)」:厚生労働省、財務省、総務省関連
・「マイナンバー制度、変更情報の確認(2)」:国税庁、「番号制度」「本人確認」「法定調書」FAQ
・「マイナンバー制度、変更情報の確認(3)」:国税庁、「源泉所得税関係」FAQ

事業者がマイナンバーの提供を求める対象

事業者はマイナンバー関連業務(制度上は「個人番号関係事務」又は「個人番号利用事務」)を行うため、従業員等からマイナンバーの提供を受ける必要があります。
マイナンバーの提供を求めるのは基本的にはマイナンバーを保有する本人ですが、「扶養控除等申告書」に記載する従業員等の扶養親族のマイナンバーについては、従業員等を「個人番号関係事務実施者」として取り扱うことで、従業員等に対して提供を求めることになります。
また、マイナンバーの提供を求める時期は、原則としてマイナンバー関連業務が発生した時点ですが、雇用契約等に基づき今後、マイナンバー関連業務の発生が予想される場合は、契約締結時点等でマイナンバーの提供を求めることが可能です。
マイナンバーの提供を求める対象

マイナンバーを「収集」するとは?

マイナンバー制度において、制度上の用語と意味を明確に理解することが、制度に準拠した、効率的な手順を作成する上で重要な要因となります。
マイナンバー制度における「収集」とは、集める意思を持って自己の占有に置くことを意味します。「収集」の例は以下の通りです。

  • マイナンバーの記載されたメモを受領する
  • 聞き取ったマイナンバーをメモする
  • 情報システム等で画面表示されたマイナンバーを書き取る
  • 情報システム等からマイナンバーを含む文書等をプリントアウトする

一方で、マイナンバーを含む特定個人情報の提示を受けただけでは、「収集」に当たりません。例えば、マイナンバーを含む特定個人情報が記入された書類を部門等で取り纏めて、社内のマイナンバー関連業務担当者に渡す場合、取り纏め担当者はマイナンバーの記載有無等を確認するために書類を閲覧することはできますが、コピー等を取得してはいけません。
マイナンバー収集イメージ

マイナンバーを取得する際の本人確認

事業者が従業員等からマイナンバーの提供を受ける際には、他人のなりすまし等を防止するため、法制度で認められた方法で厳格な本人確認を行う必要があります。本人確認では、正しい番号であることの確認(番号確認)と、手続きを行っている者が番号の正しい持ち主であることの確認(身元確認)を行います。
番号確認については、①個人番号カード、②通知カード、③マイナンバーが記載された住民票の写し等、の方法がありますが、①、③は制度開始後となるので、当面は通知カードによる確認となります。
身元確認については、制度上は運転免許証やパスポート等、原則として官公庁が発行した書類による確認が求められますが、国税関係手続については、学生証や社員証、資格証明書等も適用可能です。
本人確認の方法の概要について、以下に取り纏めたのでご確認ください。
本人確認の概要

なお、2回目以降の本人確認手続きは、初回の本人確認で取得した記録と照合する方法でも可能です。また、従業員等に関しては、本人に相違ないことが明らかに判断できると事業者が認める場合、身元確認書類の提示を求めなくても良いとされています。
従業員等の扶養家族のマイナンバーについては、マイナンバーの提供義務者が従業員等か、扶養家族本人かによって異なります。年末調整時に提出する「扶養控除等申告書」では、従業員等が個人番号関係事務実施者として扶養家族のマイナンバー収集と本人確認を行い、マイナンバーを事業者に提供します。
一方、国民年金の第3号被保険者の届出では、従業員等の配偶者(第3号被保険者)本人が事業者に対して届出を行うため、事業者による当該配偶者の本人確認が必要です。しかし、従業員等が配偶者の代理人として事業者に届出を行うことも可能であり、その場合は、事業者は代理人からマイナンバーの提供を受ける場合の本人確認を行います。つまり、

  • 「代理権確認書類」:戸籍謄本、 委任状、等
  • 「代理人(従業員等)の身元確認書類」:個人番号カード、運転免許証、等
  • 「本人(従業員等の配偶者)の番号確認書類」:本人に関わる個人番号カード、等

の書類の提示が必要となります。

パートタイマーやアルバイトのマイナンバー

事業者が取得対象とするマイナンバーは、正規雇用された従業員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも含みます。パートタイマーやアルバイトの収入は給与収入であり、年間の給与支払額が一定金額以下の場合は、税務署への所得税の源泉徴収票の提出はありませんが、給与支払を受ける個人が居住する市町村に給与支払報告書を提出するため、マイナンバーの取得が必要です。
パートタイマーやアルバイトの場合もマイナンバー取得の際に本人確認が必要になりますが、地方出身の学生等の場合、通知カードの確認ができない可能性もあります。実家を離れて暮らす学生等については、住民票を実家から移していないケースがあります。マイナンバーの通知カードは住民票に基づいて送付されるので、住民票を移していない場合は現在の居住場所ではなく、実家に通知カードが届けられます。
現在雇用中のパートタイマーやアルバイトを年明け以降も継続する場合は、通知カードの配布状況について確認する様周知し、制度開始後もスムーズに対応できるようにすべきです。
また、制度開始後のパートタイマーやアルバイトの採用については、採用手続きの際にマイナンバーを取得するプロセスを組込み、対応する必要があります。
パートタイマーやアルバイトに関しては、身元確認の際に運転免許証やパスポート等の書類を提示できない方もいることが想定されるので、前述した国税庁の告示に提示されている、学生証等の書類による身元確認を行わなければなりません。なお、国税庁告示の内容は正規雇用された従業員にも適用できるとは思いますが、あくまでも対象範囲は国税関係手続のみとなります。よって、社会保険分野でのマイナンバー収集には適用できませんので、注意してください。
なお、派遣社員は派遣元から、出向社員は出向先から給与が支払われるので、給与の支払元でマイナンバー対応を行うことになります。また、海外駐在者で国内に住民票が無い場合は、マイナンバー自体が発行されません。入社内定者については、確実に雇用されることが予想される場合は、正式な入社前でもマイナンバーの提供を求めることが可能です。新卒採用者であれ中途採用者であれ、入社手続きのどの時点でマイナンバーを取得するかは検討すべき対象となります。

マイナンバーの取得形式:紙か、電子データか

マイナンバーの取得形式としては、以下が考えられます。

1.紙の書類ベースで取得する
2.電子データで取得する
2-a.画像データで取得する
2-b.テキストデータで取得する

収集したマイナンバー等の特定個人情報をデータベース化して保管するのであれば、最初から電子データで収集しないと、後ほどマイナンバー関連事務担当者が個別に打ち込む必要が出てきます。また、文書ベースで収集した場合は、遠隔地からの書類送付時における紛失・漏えいリスクや保管コストの増加といった課題も出てきます。画像データを使用する場合、保管コストは抑えられますが、データベースへの打ち込み作業が発生します。
マイナンバーをテキストデータで、本人確認書類を画像データでというのが理想形かもしれませんが、電子データによる収集はそれなりの仕掛けを構築するコストと期間が必要になってきます。いずれにしろ、各事業者の実態に合わせて収集手段を決めていく必要があります。
また、マイナンバーをデータベース化して保存する場合、従業員等またはマイナンバー関連事務担当者がデータ入力する必要がありますが、やはり打ち間違いのリスクを否定することはできません。マイナンバーは12桁の数字で成り立っていますが、実際にマイナンバーとして生成されるのは上位11桁であり、最後の1桁は検査用数字(チェックデジット)となっています。データベースに入力する際は、この検査用数字を使用して入力されたマイナンバーの妥当性をチェックすることをお勧めします。
マイナンバーのチェックデジット

備考

地方出身者で住民票を実家から移していない場合、実家にマイナンバーの通知カードが届けられるということを述べましたが、その場合、特殊詐欺と同様の手口で窃取される可能性が考えられます。つまり、本人の通勤先や通学先、あるいは居住地の役所等の人間に成りすまして、通知カードを送付させる、というようなことが考えられます。
また、高齢者の場合も同様の手口でマイナンバーの通知カードを窃取される可能性があります。実家の両親を扶養家族にしている場合は、両親のマイナンバーを取得する際に確認できますが、そうでない場合でも注意喚起するようにしては如何でしょうか。
こういったリスクについても、きちんとアナウンスして欲しいものです。

参考:
特定個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)
国税庁のマイナンバー特設サイト
厚生労働省のマイナンバー特設サイト

上記内容に関するご相談やお問い合わせについては、「お問い合せ」のページからご連絡ください。

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