2015/1/16
もう正月気分も過ぎ、日常に戻った感のある今日この頃、年明けの東京でのみ見られる二つの「松」を見てきました。
ただし、「松」と言っても屏風の松ですが、国宝です。
一つ目の「松」は東京国立博物館の「松林図屏風」、桃山時代を代表する絵師の一人である長谷川等伯の代表作です。墨の濃淡のみで表現された松林の情景や漂う空気、そして三次元的な奥行が、見る者に静謐で幽玄な印象を与えてくれます。しかし、屏風に近づくと、その静かな印象からは想像しがたい、荒い筆致で松の枝が描かれています。それが屏風絵にもかかわらず、空気を震わせるような動きを醸し出しているのでしょうか。時を忘れて見入ってしまうような屏風です。混雑さえなければ、ですが。
もう一つの「松」は三井記念美術館の「雪松図屏風」、江戸時代中期に活躍した絵師である丸山応挙の代表作です。こちらも墨のみで描かれた松に金泥で装飾を施したシンプルな色使いです。右隻に直線的で力強い松を1本、左隻に曲線的で柔らかい末を2本配置しています。ご存知の方も多いと思いますが、松の枝や幹に降り積もる雪は屏風の下地である和紙の地肌そのままなのですが(簡単に言えば描き残し)、描かれて200年以上経つのに真っ白な状態を保っており、かつ不思議なことに雪が盛り上がっているような立体感を感じます。また、金泥によって太陽の光を浴びている様子が表現され、それがおめでたい感じを印象付けているようです。
残念ながら松林図屏風は展示が終わってしまったのですが(去年はもう少し長かったのですが)、雪松図屏風は1月24日まで展示されています。興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。
なお、東京国立博物館では常時数点の屏風絵が展示されており、現在は伊藤若冲の「松梅群鶏図屏風」などが展示されています。(現在の展示は1月25日までです)
なお、東京国立博物館と三井記念美術館は銀座線1本で行けるので、時間があれば続けて鑑賞されてもいいと思います。
リンク:
東京国立博物館の松林図屏風紹介のページ
三井記念美術館の展覧会紹介ページ
東京国立博物館の「屏風と襖絵」展示内容