作成日:2014/10/24

国内感染のデング熱については、10月15日に発症者1名が報告されて以降、国内感染だと疑われる患者の報告が無く、ようやく下火になってきたようです。
一方で、西アフリカのエボラ出血熱について、もともと小規模の流行だったセネガルとナイジェリアではWHOによって終息が宣言されましたが、西アフリカ3か国では感染者は増え続けており、累計1万人に迫る状況になっています。

EVD感染者

今回のレポートでは医療関係者の統計も掲載されており、医療従事者の443人が感染し、そのうち244人が死亡したとのことです。
また、別途紹介したとおり、米国ではリベリアからの渡航者がエボラ出血熱を発症し、米国とスペインでは看護師への二次感染が発生していることから、グローバルで感染者が発生するリスクも懸念されています。
今回は感染症が海外から持ち込まれるリスクと対応について確認します。

 

西アフリカ3国からの渡航経路

エボラ出血熱が大流行している西アフリカ3か国からの出国は陸路、海路、空路の各手段が考えられますが、日本までの距離と潜伏期間(2日から最長3週間、通常7日程度)を考慮し、空路による渡航者に絞って状況を確認していきます。
WHOのエボラ出血熱に対する緊急事態宣言以降、国際的な感染拡大の可能性から、一部の航空会社はギニア、リベリア、シエラレオネへの商業便の運航を停止しています。以下に各航空会社の状況の一覧を提示します。

Airline of Guinea

Airline of Liberia

Airline of SierraLeone

上記の通り、現在運航されている路線での直行便は、3か国相互の空路以外ではブリュッセル、カサブランカ、パリ(ギニアのみ)となっています。このように流行地域からの直行便は限られていますが、この3空港を経由すれば日本を含め、世界各地に渡航することができます。
WHOは現在のところ、空港などでの出国時検査を強化するよう求める一方で、渡航禁止や貿易制限を行わない様、訴えています。今のところ一部を除いて、西アフリカ3か国からの入国を制限してはいませんが、米国や日本では入国時の検査は厳しくなっています。
潜伏期間であれば他者へのエボラ出血熱の感染はないとされていますが、一方で症状が目に見えないため、入国検査の際に見逃してしまう可能性はあります。
また、可能性レベルで言えば、空港での乗り継ぎの際にエボラ出血熱の感染者やエボラウィルスに汚染された器物に接触して感染する機会もありうるので、西アフリカ以外からの渡航者でも100%安全とは言い切れません。

 

その他の感染症について

以前にデング熱については、海外で感染後、国内で発症するケースもあるという話をしましたが、これは他の感染症についても同様です。今年と昨年の感染症発生状況について、海外で感染した可能性が高いと思われるものは以下の通りです。

国内での感染症発症数

数字自体はそれほど大きなものではないと感じるかもしれませんが、海外由来の感染症が国内に持ち込まれ、実際に発症者がいるという事実、四方を海に囲まれていても安全とは限らないという事実に留意ください。

 

感染者が発生した場合

ビジネス目的や休暇による旅行等で海外に渡航する社員も多いと思います。多くの会社では私的な休暇旅行であっても、海外渡航先を含む旅行先を届け出る社内規程等があると思いますので、ルールの徹底を働きかけることが必要です。その上で、帰国後しばらくの間は当該対象者の体調等に留意し、異変がある様であれば病院での検査を勧めるようにした方がいいでしょう。
仮に海外渡航者が帰国後に発症した場合は、パニックに陥らずに落ち着いて対処する必要があります。まずはどのような感染症なのかを確認してください。また、感染者のデスクやロッカーには不用意に接触しないようにした方がいいでしょう。
その後は感染症によって対処が変わってくるので、病院や保健所の担当者に確認した上で対処を進めることになります。
エボラ出血熱の場合は体液や飛沫等で感染者のデスクや所持品等が汚染されている可能性があり、オフィスを封鎖する可能性も視野に入れなければなりませんが、そうでなければ、従業員の健康状況を確認した上で、インフルエンザ等のウィルス感染症等同様の対処を行うことが重要だと考えます。

  • マスクを使用する
  • 帰宅後の手&鼻の洗浄
  • 人込みを避ける

二次感染を防ぐため、消毒作業や感染症を媒介する蚊や動物の駆除は専門家にお任せした方が良いと考えます。エボラ出血熱の場合は前述の通り、知識もあり防護服で身を固めた医療従事者でも感染していることに留意ください。
もちろん、BCPが策定され、その通りに対処することがより良いのですが、そうでなくても以下のような備蓄はあった方が良いでしょう。

  • 不織布製マスク(サージカルマスク)
  • ゴミ箱、ゴミ袋:一般ごみとは分別
  • 消毒薬、速乾性消毒用アルコール製剤、石鹸、等
  • 体温計:使用ごとに消毒要、非接触型という選択肢
  • 医薬品:絆創膏、解熱剤、胃薬、痛み止め、等
  • (個人防護具一式(高機能マスク、防護服、ゴム手袋、ゴーグルなど))

最後の個人防護具については、備蓄を推奨するような文書もありますが、個人的には着脱の煩雑さやエリア確保の問題もあるので、企業で対処するレベルを超えているのではと考えます。(物資不足を想定し医療従事者が使用する目的であれば備蓄することもありだと考えます)
また、既存オフィスが使用できない場合の対応としての代替オフィスや在宅勤務等は検討した方が良いでしょう。

これからインフルエンザの季節に入ります。今年の流行情報等はまだ発表されていないようですが、毎年のことになりますので、昨年までの対応計画を再確認し、必要に応じて見直しては如何でしょうか。

上記内容に関するご相談やお問い合わせについては、「お問い合せ」のページからご連絡ください。

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