作成日:2014/10/8

先日のレポートで国内のデング熱、西アフリカのエボラ出血熱について取り上げましたが、未だにニュース等が止まらない状況です。まずはその後の状況について確認してみます。

国内のデング熱については、国内で感染した発症者が157名(2014/10/8現在、厚生労働省「デング熱 の国内感染 症例 について (第 二十八 報)」に基づく)となっており、9月下旬になってようやく患者の報告数が減少傾向にあります。一方で、10月7日には兵庫県西宮市でも感染者(東京への移動履歴なし)が報告されています。
冬を迎えるとデング熱を媒介するヒトスジシマカは成虫で越冬することができず、かつ卵にはウイルスが遺伝しないことから、来年は沈静化しているという意見もあります。しかしながら、個人的には以下の理由から、来年も感染者が発生する可能性は否定できないのではないかと危惧しています。

  • 今年の感染経路とされている、海外での感染者が国内で蚊に刺される可能性はある
  • 海外でデング熱に感染し、国内で発症した患者が毎年100~200名くらい存在する(国立感染症研究所「感染症発生動向調査」に基づく)
  •  東京等の都市部ではビルの空調機器や自販機の周辺等、屋外でもヒトスジシマカが越冬可能な場所がそんざいするのでは?(可能性は低いとは思いますが)

よって、来年も暖かくなって以降は蚊に刺されないよう注意するとともに、自治体による蚊の駆除も継続頂きたいと思います。

西アフリカのエボラ出血熱については、深刻な状況が続いています。感染者は7000名を超え、死者も3400名以上となっています。(WHO:”EBOLA RESPONSE ROADMAP UPDATE” 3 October 2014)
さらに以下の悪いニュースも報告されています。

  • 米国で西アフリカのリベリアから入国した男性がエボラ出血熱を発症
  • スペインでエボラ出血熱の患者の治療に従事していた看護師が、エボラウイルスに感染し、発症

前者については国内のデング熱と同様、ウイルスに感染してから発症までの潜伏期間中に長距離移動した結果発生した事象であり、今後も潜伏期間のある様々な感染症で発生しうる可能性があります。空港で簡単な質問等はあると思いますが、自覚症状がない状態ならば止められることは少ないでしょう。
後者については、感染者が医療設備の整った母国で治療を受けたために起こった事象です。もちろん、そのことを非難するつもりはありません。また、看護師も細心の注意を払って治療を行っていたとは思いますが、何らかのミス等で患者やその体液に触れてしまったことが想定されます。
米国や欧州、日本等の医療や検疫体制が充実している国や地域では、こうした事象が起きても感染が拡がる可能性は低いと思いますが、今回の米国やスペインのようなケースは今後も起こりうることです。

世界各国との交通が発達し、交流が活発になると、一方で現地の感染症が持ち込まれるリスクも発生します。国立感染症研究所のサイトを見ると、先般紹介したデング熱以外にも、コレラ、チフス、マラリア等が海外で感染し、国内で発症したケースが多数存在します。事前に情報収集を行い、現地では基本的な衛生対策(手洗い、病人や動物との接触を避ける、等)を行う等、感染症は他人事ではなく、自分の身にも起こうる事象であることを認識しなければいけないと思います。また、国内だから安全という訳ではなくなってきているので、過敏に反応する必要はないですが、日常から感染リスクに注意する必要があります。
もしかしたら数年後には日本の蚊取り線香が熱帯仕様(日本で発売するものより強力らしい)となっているかもしれません。

だんだん住みにくい世の中になってきている気がしますが...