作成日:2014/8/12

業務継続計画(BCP)の策定について、着手はしたものの途中で行き詰ったり、策定したけれど実際には機能しなかったりといったことはないでしょうか。また、策定してから一度も見直しを行っていないということはないでしょうか。
今回は業務継続計画(BCP)を策定する上での論点について幾つかご紹介するとともに、BCP策定というイベント対応ではなく、マネジメント活動として定着させ、継続的改善を行うための施策について確認することにします。

業務継続計画(BCP)の論点概観

業務継続計画(BCP)策定プロセスと、今回の論点の概観は以下の通りです。

BCP策定イメージ

論点1:リスクの考え方

業務継続計画(BCP)を策定するにあたって、前提となるリスクを設定していると思います。その際に、地震や火災といった事象をベースにしていないでしょうか。策定作業を進めるにあたって状況をイメージしやすいという利点はありますが、一方で、「地震用BCP」、「火災用BCP」といったように、事象ごとにBCPを策定しなければなりません。また、「地震用BCP」といっても、震源に近いのか遠いのか、地震に伴う津波の発生を想定するのかしないのか、というようなパターンを考慮すると、膨大な量の計画書が出来上がりかねません。
重要なのは、地震という要因によって引き起こされる結果であり、経営資源に対してどのような状況が発生するか、ということです。地震によって本社の建屋が倒壊することも、本社が火災で全焼することも、結果的な事象としては、「本社が使えない」ということには変わりがありません。こうした結果事象を組み合わせることで、様々なリスク要因に対して共通化が可能になるとともに、複合的なリスクにも対応可能になると考えます。

論点2:重要業務の選定

業務継続計画(BCP)の重要なポイントの一つは、重要業務を選定することです。しかしながら、この段階で壁にぶつかる企業も多いと思います。自社の業務はすべて重要であり、序列をつけることはできない、と考えている企業がほとんどだと思います。また、ボトムアップ的に意見を集約しようとしても、社員はみな自分の所属する部門の業務が重要だと考えており、結果としてすべての業務が重要業務だという結論になってしまっていないでしょうか。
私の経験上から見ても、ビジネスインパクト分析(BIA)は部門毎、または事業区分毎に詳細に作成されているにもかかわらず、全部を横に並べると重要性で選ぶことができなかったり、それぞれの部門毎で重要業務を決めていたり、といったケースが多かったと思います。
重要業務を選定するのは、災害等により経営資源が不足して日常レベルの業務活動が難しい場合、限られた経営資源をどこに集中させるかという判断を行うためなので、すべての業務というのは本末転倒であります。
重要業務の選定については、何らかの尺度をもって選定する必要があります。例えば、以下のような考え方があります。
(収益面から見た判断基準)

  • 収益の高い事業
  • 売上げの高い事業
  • 収益や売上げの大きい得意先を持つ事業
  • 競合が多く、事業停止によってシェアを落とす可能性の高い事業

(社会性や地域復興の面から見た判断基準)

  • 保守/修理業務
  • 避難者の支援に関わる業務


逆に、嗜好品や娯楽品の生産、販売といった事業は被災地域においては当面の優先度を低くするという考え方もできると思います。

論点3:情報システムの影響

日常の業務における情報システムの重要性は説明の必要がないと思います。よって、業務継続計画(BCP)の策定においても、情報システムの復旧は大きなファクターとなります。内閣府の調査でも、業務を行う上での重要な経営資源について問うと、情報システム、通信手段(固定電話、携帯電話、インターネット等)、情報(データ、重要文書)については上位となっております。
一方で、情報システムを業務継続のために日常から手当てすることはコスト面の負担が大きく、重要インフラを担う企業やグローバル展開する大企業以外はバックアップシステムを整備する企業は限られていると考えます。社内にシステム機器を設置する場合は同時被災する可能性が高いことから、システム機器を災害に強いデータセンターに設置していても、ライフラインや運用担当者の状況によっては、復旧まで相応の時間を要するかもしれません。結果として、業務側で設定した目標復旧時間(RTO)と情報システムのRTOにギャップが発生する可能性があります。その場合、一般的な業務復旧イメージに手作業による代替運用の段階を追加する必要があります。(下図参照)

業務復旧イメージ

代替業務による復旧イメージ

社外のデータセンターにシステム機器を設置する場合は、委託業者に対して災害時の対応を確認することが必要です。また、最終的に業務とシステムのRTOに差異が発生する場合は、システム復旧時に入力可能な情報を残すことを念頭に置いて、代替業務の策定を進める必要があります。

論点4:改善活動の実施

これまで業務継続計画(BCP)の策定について確認してきましたが、計画は策定して終わりではありません。計画に沿って実際に動いてみたら、思わぬところに障害があったり、社内設備の変更や社会環境の変化から取り残されていたり、という理由から計画自体が形骸化しているという事態が大いにあり得ます。よって、業務継続計画(BCP)を策定するイベントから、継続的改善を組み込んだマネジメントプロセスへと発展させる必要があります。具体的には教育による社員の意識醸成や、訓練による有事の際の対応力向上と既存計画の課題発見が中心になります。そして、計画策定から教育訓練の実施による改善活動の一連の流れを業務継続マネジメント(BCM)と呼びます。
参考までに、実際に業務継続計画を策定した企業のマネジメント状況について確認します。中堅企業でも業務継続に関わる教育や訓練は全体の7割が実施しております。一方、改善活動を行っている中堅企業は、全体の4割弱となっています。これは、訓練内容として広く行われているのが安否確認に関する内容であり、業務復旧に関わる訓練(対策本部設営、代替拠点移行、等)が実施されている割合が低いことに由来すると考えられます。

教育訓練実施状況BCP改善実施状況

 

緊急事態が発生した際に、業務継続計画で設定された内容に沿って活動するためには、平時から業務継続計画に対する意識を高め、その内容を習熟する必要があります。継続的な研修を実施することによって緊急時における対応の知識を習得すると共に、実践的な訓練を定期的に実施することによって、緊急時の対応能力を維持、向上させることが可能となります。さらに、訓練の中で発見された課題は業務継続計画にフィードバックすることで、継続的な改善につなげることができます。

 

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・BCPを維持管理するためのマネジメントプロセス(BCM)の整備
・BCPの妥当性を評価し、定着化させるための訓練計画策定と実施
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