作成日:2014/8/3
更新日:2014/12/24

以前、今年度の防災白書の中で業務継続計画(BCP)の策定している中小企業は全体の約4割に過ぎず、「策定の予定なし」と回答した中小企業も増加しているというデータを提示しました。東日本大震災から3年と数か月が経過した今、業務継続計画を策定する必要性や効果について確認します。


中小企業における業務継続計画(BCP)の策定状況

内閣府は平成25年度に企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査を実施しました。その結果は平成26年7月に「企業の事業継続及び防災に関する実態調査結果」として公表されました。その結果のうち、「大企業」と対比する形での「中堅企業」と分類された企業群の結果に注目してみます。
まずはBCPの策定状況です。こちらについては先も述べたとおり、BCPの策定に取り組む企業は増加傾向にある一方で、BCPを策定する意思を持たない企業の割合も増えております。アンケート結果から震災直後はBCPを策定予定としていた企業の1/3程度が予定を変えたことが想定されます。

BCP策定状況

次に、BCPという言葉が一般に使用される前によく使われた「防災計画」の策定状況ですが、こちらは全体的に増加傾向にあり、ほぼ半数の企業が防災計画を策定済みと回答しております。(BCPと防災計画の比較は後ほど提示します。)

防災計画策定状況

最後に、BCPを策定する予定のない企業に対してその理由を確認したところ、

  • 社内のリソース不足
  • 外部からの要請がない
  • BCP策定の必要性やメリットが不明確

の三つに大別される内容でした。(個々の理由はグラフを参照ください)

BCPを策定しない理由

一方で、BCPを策定した企業の理由で最も多かったのが、「過去の災害、事故の経験から」というものでした。BCPをはじめ、リスク管理やセキュリティといった領域は直接売り上げや業績に繫がるものではないことから、どうしても優先度が低くなる傾向にあるような気がします。私もBCPや危機管理計画の策定に携わったのは、いわゆる重要インフラを担う会社か、以前に事故が発生してスムーズに対応ができず、右往左往した経験を持つ企業がほとんどでした。


業務継続計画(BCP)と防災計画

災害への対応ということでBCPが注目されていますが、これと似たような位置づけで従来から存在するのが防災計画です。防災計画は1995年の阪神・淡路大震災発生以降、策定する企業や自治体が増加しました。一方、BCPは2001年のアメリカ同時多発テロ以降に注目され始め、日本にも導入されてきた経緯があります。両者には重複する部分もありますが、防災計画は人間が生き残ることを中心に考えられていることに対して、BCPは企業が生き残ることを目的とした計画であると理解いただければと思います。

防災計画とBCP対比

先ほどのアンケート結果より、BCPについて「策定済」「策定中」とした中堅企業は4割弱である一方、防災計画については7割弱という結果となっております。つまり、災害への対応計画が必要という認識は多くの企業が有していると考えられます。
また、別の調査によると、東日本大震災後の企業倒産件数を見ると、被災による直接的被害より、外部環境に由来する間接的被害によって倒産した企業が圧倒的に多いというデータがあります。自分たちが生き残った後、会社をどう立て直すかという視点で、BCPを検討してみてはいかがでしょうか。

東日本大震災、被害区分別倒産件数

 業務継続計画(BCP)の必要性・メリット

業務継続計画(BCP)はグローバル企業や公共会社といった大企業のものであって、中小企業の多くには必要のないものと考えている方も多いのではないでしょうか。被災による影響を受けやすいのは体力の少ない中小企業であり、被災時に右往左往することなく、従業員の安全と資産の保全を行った後、早期の復旧や立て直しを図ることで生き残りを考える必要があると思います。つまり、BCPの策定は企業自身のために策定するものであって、外部から言われたから、という性格のものではないと理解いただければと思います。
また、社内のリソース不足、特にノウハウのある人材の不在やコスト面での負荷が高いことを理由に業務継続を策定しないというのは、先ほどのアンケート結果にもありましたが、人材については我々のような外部の専門家を活用することで解決できます。業務継続計画(BCP)については、特に大手のSIerやコンサルタント会社によるシステム導入やバックアップセンター構築の提案等から、コストが高いというイメージを持たれていると思いますが、それはあくまでも手段の一つにすぎません。大切なのは、災害に直面した際の自社の方針や行動基準であり、それに合わせてできる範囲で手段を選択すればいいと思います。また、取引相手や別地域の同業他社と連携し、相互に補うことで無駄な投資を抑制することも可能となります。
BCPを策定する際には自社の業務を棚卸し、自社の経営資源やビジネスモデル上の脆弱性を抽出することで、被災時の対応ばかりでなく、現状の業務プロセスの見直しや改善につなげることもできます。被災時には重要業務の早期復旧を図ることで、マーケットの占有率低下や顧客離反を軽減させることができます。
また、平常時に教育や訓練を行うことで、従業員における防災意識の醸成を図ると同時に、発見された不具合等をBCPに反映させることでブラッシュアップすることができます。

BCPの運営

BCPの策定手順等については、また別の機会に説明させていただきます。
上記内容に関する相談や問い合わせについては、問合せフォームにてご連絡ください。

デルタエッジコンサルタントでは、業務継続計画(BCP)に関して、
・業務継続計画(BCP)の策定/改訂
・BCPを維持管理するためのマネジメントプロセス(BCM)の整備
・BCPの妥当性を評価し、定着化させるための訓練計画策定と実施
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