2015/5/22

近年、チームワークでの作業は当たり前のように行われています。
一般に、ある作業をする上で複数の人間が関わると、様々な面でロスが発生する可能性があります。それでもチームを組んで作業を行うのは、
・個人でできることには限界がある
・複数の人間の知恵を交差させることにより相乗効果が生れる
といった理由があるからです。特に後者の相乗効果がロスを上回れば、チームワークを行う意義があるという判断になります。

それでも時々、チームの成果物が単なる作業結果の寄せ集めに過ぎず、相乗効果どころか、1+1が2にも満たないことがあります。つまり、チームとしての期待効果がまったく表れていない状況です。それはなぜでしょうか。

チームワークは分業ではない

そもそもチームという存在はどのようなものでしょう。様々な方が色々な定義をしておりますが、私が考えるチームの特徴は、以下の3点にあると思います。

1.達成すべき目標が明確であり、共有されている
2.個々のメンバーが果たすべき役割がそれぞれに割り振られている
3.メンバー間のコミュニケーションによる協力と相互依存関係が存在する

まず注目したいのは、2.の役割分担が単なる作業分担になっていないかどうかです。ある作業を幾つかのパーツに分解し、それぞれに担当者を割り振ることで効率的に大きな成果がもたらされることは、アダムスミスがピン工場の例で示した通りです。そこでは、それぞれの担当者が割り振られた作業を黙々と行うことが重要であり、3.の協力関係や相互依存関係は必要最小限の範囲にとどまります。
しかしながら、チームに求められるのが定型化した作業の繰り返しではなく、新しい製品やサービスを企画したり、既存の業務のやり方を大きく変えたり、といった場合は、明確な作業プロセスがあるわけではないので、メンバーのスキルや経験に基づく役割分担を行います。それぞれの役割の境界は曖昧なので、必然的に相互の担当者が調整して役割間のギャップを埋めたり、課題を解決したり、といった相互依存関係が発生します。最終的にそれぞれの成果を持ち寄った時には、ある程度の調整がされているため、寄せ集め以上の成果が期待できます。もちろん、分業体制であっても、メンバー間のコミュニケーションを密にすることで、作業プロセス等の改善が行われ、想定以上の効果がもたらされることもあります。その意味で、チームワークは単なる分業とは一線を画していると考えられます。

チーム構成の変化への対応

もう一つ注目したいのは、チームの構成が変わってきたことにメンバーが対応できているかどうか、という点です。日本人は元々、集団で何かに取り組むことに長けていると言われてきました。それは我々の祖先が農耕民族として築いてきた伝統の賜物であり、戦後の高度成長を支えてきた要因の一つであると考えられます。そのような従来のチームは同一の組織や部門の中で構成されており、あたかも所属する組織の縮図となっております。チーム内では職位や年次に沿った上下関係が成立しており、チームメンバーは互いに見知った者同士であり、上位者の指示のもと、協調的に行動することが求められます。
しかし、企業や社会の抱える課題が大きくなってくると、個々の部門の問題ではなく、組織全体で対処する必要が出てきます。そのため、組織の様々な部門から、時には海外から様々な専門性を持つメンバーを選抜し、組織横断的なチームを構成することになります。そのようなチームにおいては、メンバーは必ずしも相互に見知っているとは限らず、指名されたリーダーの下でフラットな関係となります。チームメンバーはリーダーの指示で動くのではなく、それぞれの役割に応じて自律的に動くことが求められます。こうしたチームで重要なのは、メンバー間のコミュニケーションです。異なる専門性や経験を持ったメンバー同士が、それぞれの見地から、時には知識を提供し、時には意見を戦わせ、共通の目標を達成していくのです。
しかしながら、往々にしてコミュニケーションがうまくできないメンバーがいるものです。私もこれまでの経験の中でそのようなメンバーを何人も見てきました。そういったメンバーの話を聞き、行動を見ると、以下の様な理由が多かったように思います。

・よく知らない相手とは話しにくい
・好意を持てない相手には話しかけづらい
・自分が相手の専門領域について良く知らないことを知られたくない

どれ一つとしてプロフェッショナルとは言い難い理由ではありますが、性格上の問題もあるので無理も言えないところです。こうしたメンバーが少数であれば、周りがサポートすることで改善も可能ですが、多数を占められると非常に難しい状況になるでしょう。結果として、部分的に専門性は高いけれど、全体としてはまとまりのない成果となる可能性があります。例えるなら、素材同士の味が喧嘩して料理としての味がまとまらない状況です。

プロフェッショナルとしてのチームワークの実現

これまでの内容をまとめると、集団での作業は以下の様なイメージで分類できます。
集団作業の分類イメージ
複雑な課題を解決し、イノベーションを起こすには、多種多才の専門家が集まったプロフェッショナルとしてのチームワークを実現することが重要です。一方で、多様なバックグラウンドは人間的な好き嫌いに発展する可能性も秘めています。このような場合、職場外で親睦を深めるような活動を行いがちですが、必ずしも効果があるとは限りません。
じゃあ、どうすれば、という問いに対して私も確かな回答が難しいのですが、私が考えるには、各メンバーにプロフェッショナルとしての自覚があれば、
・今のチームの目的は何か
・そこでの自分の役割は何か
を常に意識し、チームの目的達成を念頭に置けば、プロフェッショナルとして合理的な判断を行うことができるようになります。そして、このことが意識できていれば、人間的な負の感情を抑制してチームに貢献することも可能ではないでしょうか。

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