業務改善と聞くと、多くの方々は対象とする業務を見直し、新しい業務プロセスを策定して、関連する情報システムを刷新する、といったイメージを思い浮かべることでしょう。あるいは、シンプルにERPパッケージを導入して業務を変えていく、と考える方もいるでしょう。
もちろん、このような大がかりな業務改善のやり方もありますが、一方で、もっと簡易に、今からすぐ取り掛かれる改善方法もあります。それは、日常の業務で都度発生する「ムダ」を解消していくことです。「ムダ」を解消することで、日常の業務が効率化し、コスト削減の効果も期待できます。

業務の「効率化」とは

本題に入る前に、業務の効率化について考えてみます。
効率の意味を調べると、以下の様な説明があります。

「使った労力に対する、得られた成果の割合。」(出典:小学館「デジタル大辞泉」)

よって効率化とは、以下の様な意味となります。

「効率を良くすること」=「使った労力に対する、得られた成果の割合を向上させること。」

すなわち、以下の様に解釈することができます。

  1. 同じ労力で、以前より成果を上げる
  2. 少ない労力で同じ成果を上げる

効率化イメージ
しかし、効率化したと主張する中には、以下のようなケースが見られます。

  • 単純に手を早くした
  • 本来やらなければいけない手順を省いて、労力や時間を節約した

前者については、その結果が本来のパフォーマンスであって、これまでは全力を出さないで作業を行っていたと見なされる可能性があります。
後者については効率化ではなく、省略でしかありません。言い換えれば手抜き作業です。そのため、品質が劣っていたり、ばらつきが発生したりする可能性があります。効率化によってもたらされるのは、それまでと同等レベル、またはそれ以上の品質が前提であると認識すべきです。

散見される業務上の「ムダ」な行為

仕事を行う上で「ムダ」な作業を行おうとすることはまずありません。しかし、実際にはあらゆる箇所で「ムダ」なことが散見されます。それは作業に向き合う際に、どこに「ムダ」があり、どうすれば「ムダ」なことをしないで済むか、という意識を持たないでいるからです。結果として、残業や休日出勤を行う、追加的なリソースを投入する、という「ムダ」が発生した挙句、スケジュールや品質レベルを守れない、といった弊害が発生します。代表的な「ムダ」な行為は、以下の様に分類できます。

1.手待ちの「ムダ」
2.やり過ぎの「ムダ」
3.移動の「ムダ」
4.在庫の「ムダ」
5.無計画の「ムダ」
6.作り過ぎの「ムダ」
7.不良の「ムダ」

1.手待ちの「ムダ」

何らかの理由で次の作業に進めず、一時的に作業を停止し、手持ち無沙汰になる状態です。例えば、資料を作成して上位者にレビューをしてもらっている間、ただ待ち続ける状態にあるケースが該当します。また、結果として就業時間内に作業が終わらず、残業せざるを得ない状況に追い込まれるというのは、オフィスではよく見られます。
この「ムダ」を改善するには、やるべき作業をリストアップし、それぞれの作業のリードタイムを意識して作業を進めることが必要です。その中で作業待ちが発生するタイミングと想定される待ち時間がわかるので、その時間を活用して別の作業や、後続の作業の準備に充てることで、時間を有効活用することができます。

2.やり過ぎの「ムダ」

本来必要とされる作業の結果レベルを超えて、または関係のない部分に労力を費やす状況です。例えば、作成した資料に内容とは関係の無い装飾を追加したり、プレゼンテーションの動作を定義したりすることが該当します。
この「ムダ」を改善するには、作業の目的を明確にし、何が重視されているのかを認識した上で最終形をイメージして作業を進めることが必要です。資料作成の場合、社外向けのプレゼンテーションであれば、先方が理解し易い様ビジュアル面も含めて考える必要もありますが、社内の進捗確認用であれば、要点を箇条書きベースで整理した資料を短時間で作成し、口頭で補うことにすれば準備時間は最小化できます。

3.移動の「ムダ」

ここでの移動の意味は、外出等による移動時間から、社内の離席時間まで幅広い範囲を含んでいます。意識すべきことは、移動によって付加価値はほとんど創出されないことです。
この「ムダ」を改善するには、移動経路考慮して最短経路になることを意識することが重要です。先方次第という意見もありますが、先方との調整ができない様では「ムダ」を出さないことができないばかりか、将来的なステップアップも難しくなります。
また、プリントアウトなどで離席する場合も都度ではなく、一度の離席で複数の用事をまとめて済ますことを心がけることが重要です。最近はフリーアクセスのオフィスも増えていますが、その場合は資料を保管しているキャビネの近くの席につく等の工夫もできます。組織で対応するのであれば、オフィスのレイアウトを人の流れに合せて再配置する等の対応も可能です。
とある有名企業では、動作レベルまで分解して「ムダ」を省くことが行われています。例えば、2歩で移動するところを1歩で移動できるようにするといったことを現場レベルで実践しています。

4.在庫の「ムダ」

不要な備品、書類、データなどを保有することであり、そこから派生する余計な時間やコストも含まれます。不要な在庫はこれを保管するだけで追加的な場所や管理コストが発生します。使用期限があるものは将来的な廃棄コストも発生します。また、不要なものの中から必要なものを探すための余計な時間や間違いによる手戻り等もあります。
この「ムダ」を改善するには、身の回りの整理整頓をする中で本当に必要なものを把握し、それ以外は捨てる、あるいは倉庫等に送る等の措置を行うことが重要です。

5.無計画の「ムダ」

作業を行う上での段取りや、必要とされる資材や情報、といった事前に準備すべきことを全く行わず、無計画に作業に取り掛かり、何かが必要な局面で都度対応するため、追加的な時間や労力を費やす状況です。目的やアジェンダがなく、ただ集まっているだけの会議もここに含まれます。
この「ムダ」を改善するには、事前の計画はもちろんのこと、節目ごとに計画の見直しを図ることが重要です。当初の計画を頑なに遵守する人がいますが、作業の目的を達成するためには、臨機応変な対応も必要になります。会議の場でも、ファシリテーターは議題毎の進行や時間配分を確認しつつ、議論が紛糾しそうな場合は臨機応変に舵取りを行い、有意義な内容にすることが必要です。

6.作り過ぎの「ムダ」

必要とされる分量以上に多く作成したり、必要とされるタイミングよりも早い段階で作成したりしてしまう状況です。例えば、会議用の資料を参加人数以上に作成したり、会議の何時間も前に準備した資料に手直しが発生して修正、再印刷したりする様なケースが該当します。また、発注の手間やまとめ買いによる割引等の理由から、頻繁に使用されない備品や材料などを大量に発注することも該当します。結果として、上述した在庫の「ムダ」に繋がることになります。
この「ムダ」を改善するには、対象ごとに必要とされる量や頻度をあらかじめ確認することが重要です。過去の経緯から慣習化している資料作成も、現在の事業状況で再確認すると、毎週行っていることが実際は月次ベースで問題ない、といった場合があります。

7.不良の「ムダ」

作業の結果として不良なものを作成し、廃棄または手直しをしなければならない状況になることです。また、不良なものをそのままにし、後でより大きな被害が発生することも含まれます。
この「ムダ」を改善するには、次に起こさないよう頑張ろう、という精神論ではなく、原因を究明し、作業プロセス等を手直しすることが必要です。
ここで注意すべきは、廃棄や手直しすることを「ムダ」と考えてしまうことです。不良なものを廃棄したり手直ししたりすることは必要なコストであって、「ムダ」ではありません。そもそも不良である時点でそれは成果ですらありません。しかし、「コスト削減」という目標の下で要不要の判断がされないことがあります。こうした考えが最近の企業不祥事の要因の一つである場合があります。

その「ムダ」は本当に不必要ですか?

最後に注意すべきことは、上記に提示した内容がすべて「ムダ」だから不必要、という短絡的な判断に陥らないことです。特に管理者の方は上記の様な部下の行為を見て「ムダ」だと指摘しがちですが、実際には必要な行為もあることを考慮する必要があります。逆に指摘された方も、こういった理由で必要な作業です、ということを明確に伝えることが必要です(もちろん、「ムダ」でない作業をしていることが前提です)。
例えば、自分の部下がショッピングサイトを閲覧しているからといって、手が空いていると判断することは早計です。担当業務がショッピングサイトのセキュリティ評価であれば、実際に画面を確認することは必要な作業になります。短絡的な判断は部下の信頼を裏切ることにもなりかねません。
また、「ムダ」や「効率化」の意味を履き違えることも問題です。不良の「ムダ」で述べたように、不良品を「ムダ」になるからといって何もなかったことにすることは大きな間違いです。本来ならば、不良品ができないようにどうするかを考えるのが「ムダ」の削減であり、業務改善と呼べる内容です。不良品を「ムダ」にしない行為は効率化の項で説明したように、単なる手抜き作業に過ぎません。その結果、様々な企業不祥事として発覚している例も数多くあります。「ムダ」を意識するあまり、それ以外のことが見えなくなるのは大きな問題であることを認識する必要があります。

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