今日、企業や組織の活動における事業環境や社会環境の変化やテクノロジーの進歩に伴い、企業や組織を取り巻くリスクも多様化しています。もし、リスクが顕在化した場合には素早い対応と同時に、社会に対する説明責任が求められます。リスクへの対応プロセスが遅れたり、誤ったりした場合、企業や組織の信頼が失墜するとともに、様々なステークホルダーに損失を与えかねず、状況によっては存続の危機を招く可能性もあります。
多くの企業や組織では、こうした状況に対応するためにリスク管理体制や危機管理体制を整備していますが、報道等を見ると十分に機能していないように見受けられるケースが散見されます。
一方で、日常からリスクの予防に努め、危機的な状況が発生しても適切に対処することができれば、ステークホルダーに対する信頼性が高まり、透明性が確保されることにより、企業価値の向上に寄与することができます。
企業を取り巻くリスク
企業や組織は日常からリスク管理活動として様々なリスクの予防等に努めるとともに、様々な危機的状況に対処するため、危機管理活動の基本となるマニュアルを策定することが重要です。今回から複数回にわたって、危機管理マニュアルを検討、策定する上でのポイントについて確認していきます。

危機管理とは

危機管理については、色々な場所で様々な定義がされています。また、リスク管理(リスクマネジメント)と混同して用いられているケースも見られます。リスク管理と危機管理とを対比したイメージは、以下の通りです。
リスク管理と危機管理

つまり、リスク管理とは日常活動の中で自社において想定される潜在的なリスク要因を洗い出して評価し、その評価結果に基づいた対応(回避、移転、低減、保有)を行うことである一方、危機管理とは顕在化したリスクに対して損失を最小化するための活動であると位置づけられます。

日常から危機管理体制を整備する必要性

一般にリスクが顕在化し、企業や組織が危機的状況に陥る場合は突発的であることが多く、予測不可能、または予測できても時間的余裕の無い場合がほとんどです。また、顕在化したリスクの内容によって、対処法は変わってきます。そのため、危機的状況に直面して慌てて構築された体制では適切な対応を行うことはまず不可能です。さらに誤った対応を行うと、二次災害を引き起こすこともあり、その影響は計り知れないほど大きくなる可能性があります。
また、こうしたリスクが顕在化して危機的状況に陥った際には、経営レベルで状況を的確に把握し、社会に対する説明責任を負わなければなりません。「知らなかった」「分からない」ということでは世間の非難を浴びることになり、事態の収拾を困難にするだけです。
そのため、日常から企業や組織に関するリスクを把握し、リスク顕在化による危機発生を想定した具体的なマニュアル等を作成し、その内容を内部に周知し、時には訓練を行うことによって、いざという時でも慌てずに危機に対処することが可能となります。
危機管理整備の必要性

危機管理活動はある意味、非日常の活動なので、リスクが顕在化したすべての事象に対して行うことは非効率的であり、日常では獲得できたビジネスチャンスを逃す可能性もあります。そのため、一般には数段階の危機対応レベルを定義しておき、発生した事象や規模、影響範囲に応じてエスカレーションルールを策定するケースもあります。その一例を以下に示します。
危機管理へのエスカレーション

危機管理マニュアルを策定する上での着目点

それでは、危機管理活動の基本となる危機管理マニュアルは、どのような構成で検討、作成していけばいいのでしょうか。弊社では以下の事項に着目して危機管理マニュアルを策定する必要があると考えております。

  • 緊急時体制
  • 発動と初動対応
  • 情報発信、コミュニケーション
  • マネジメント活動

「緊急時体制」とは、緊急事態が発生、または発生が予測される場合に設置される非常時の対策組織であり、緊急事態に関連する全ての意思決定がここで下されます。この緊急時体制で事前に定義すべき組織構成、構成員、役割分担、等について確認します。

「発動と初動対応」について、緊急時体制を発足させるには、その発動を宣言するための判断プロセスや判断基準が必要となります。また、危機的状況による被害を最小化するため、初動対応において適切かつ迅速な判断を行うための情報管理について確認します。

「情報発信、コミュニケーション」について、緊急事態が発生した際には社内外の様々なステークホルダーに対して、適切な手段を用いて、迅速な情報発信、情報連携を行う必要があります。ステークホルダーとの関係性に応じた様々な手段で、情報の一貫性を保ちつつ、情報発信や情報連携を行うための方策について確認します。

「マネジメント活動」とは、策定した危機管理マニュアルを常に適切な状態に保ち、組織内部に周知・定着させるための活動内容について確認します。

次回からは「緊急時体制」に関する検討すべきポイントについて確認します。
―――>「危機管理マニュアル策定のポイント(2)-緊急時体制の役割等

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