マイナンバー制度の運用が開始される2016年1月まであとわずかとなりましたが、ここにきて行政側の対応に様々な動きがあります。ここ3か月の間に省令や施行規則等の改正が相次ぎ、FAQも大幅に更新されています。こうした改正や更新には様々な目的がありますが、事業者等がマイナンバーを含む書類やファイルを管理する際の手間と、情報漏えいリスクを軽減するという目的も含まれています。当初のガイドライン等では事業者や従業者、あるいはマイナンバー業務の委託先の負荷が高くなる可能性があるという、様々な要望に応えた結果となります。
今回はその変更内容について、何回かに分けて確認していきます。
※今回紹介した内容は2015/12/1時点の公開情報に基づいており、今後変更等が発生する可能性があるので、ご留意ください。

厚生労働省における制度改正等の状況

厚生労働省では9月29日に公布された「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」で、ハローワークから交付される雇用保険の「被保険者資格取得通知書」などの、雇用保険に関わる返戻書類にはマイナンバーを記載しないことが定められました。この結果、返戻書類はマイナンバー制度における特定個人情報ではなくなるため、これまでと同様普通郵便での授受が可能となります。また、労働者災害補償保険制度(労災保険)でも、マイナンバーは請求時に記載するだけで、海外派遣などの際に行う特別加入の手続きでは不要にするとしています。
この省令に先駆けて9月15日に公開されたFAQでも、質問とこれに対する回答が幾つか追加、変更されています。以下に追加、追記された箇所の幾つかを紹介します。
(以下、「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」(平成27年9月14日版)に基づき記載)

追加Q1 個人番号の届出義務が努力義務ならば、届出をしない場合に罰則等の適用はないのか
雇用保険手続の届出にて、個人番号を記載しない、または誤っていた場合の罰則規定は制度上設けられていない、記載されている一方で、個人番号の記載は制度上求められる努力義務なので、ご協力、ご理解をお願いするよう記述されています。

Q8 雇用保険に関わる返戻書類(例えば、雇用保険被保険者資格取得届を提出した場合にハローワークから交付される雇用保険被保険者資格取得確認等通知書など)には個人番号が記載されるのか。
上記で述べた通り、返戻書類には個人番号は記載されません。今回の変更で、返戻書類の内容が具体化されています。

追加Q5 個人番号カードの写しを取った上で、事業所において保管することはできるか。
個人番号関係事務では正しい個人番号を取り扱うことが前提のため、事業者が個人番号カード等のコピーを取得して個人番号を確認し、保管することは可能です。ただし、取得したコピーを保管する場合、安全管理措置を適切に講じることが求められます。

追加Q6 従業員から個人番号の提供が受けられなかった場合は、理由書の提出が必要となるのか。
雇用保険関係については、個人番号の提供が受けられなくても、理由書の提出、提供が受けられなかった理由等の説明は不要とされています。
なお、国税庁のFAQ(法定調書に関するFAQ(1)法定調書関係(総論)Q1-3)では、
「提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。」
とありますので、ご留意ください。

追加Q7 従業員の個人番号を届出しなかった場合に、ハローワークから督促等がされるのか。
上記「追加Q1」の通り、事業主の個人番号の届出は努力義務なので、個別に個人番号の届出の督促を行う予定はないとされています。

追加Q8 従業員がすでに退職しており個人番号を取得することが困難であるが、この場合は、個人番号の記載は不要と解して良いか。
こちらについても上記「追加Q1」の通り、基本的には個人番号を記載する様努力すべきですが、仮に個人番号の記載がなくても受理されない、ということは無いとされています。

追加Q9 個人番号が記載されている雇用保険手続の届出書類の保存年限はいつか。
個人番号を記載する雇用保険手続に関する全ての届出・申請書の原本はハローワークに提出するため、事業者が写しを取って保管する義務はないとされています。事業者の判断で写しを保管することは問題ないですが、その際には適切な安全管理措置を講じる必要があります。
一方で、返戻書類には上記「追加Q8」の通り、個人番号は記載されませんが、雇用保険関係の書類は従来どおり完結の日(退職、解雇死亡の日)から2年(被保険者に関する書類は4年)保存する必要があります。

追加Q10 新様式はいつ頃、確定となるのか。また、新様式の帳票はいつ入手が可能になるのか。
現在は厚生労働省所管の各種制度で個人番号(マイナンバー)を追加するための厚生労働省関係省令の改正のための所要の手続を一括して行っており、施行期日は平成28 年1月1日の予定、という回答となっております。
現時点のホームページ上でも、
「平成28年1月より使用していただく様式の案となります」
という記載がされています。
よって、年明け以降に公開されている様式を入手し、利用することで対応した方が良いと考えます。

追記Q11 旧様式はいつまで使用が可能なのか。
マイナンバー制度が運用される平成28 年1月1日以降も経過措置として利用できますが、所定の様式にて個人番号を届出ていただく、とあります。
つまり、旧様式を利用しても別途個人番号(マイナンバー)を届出る必要があるので、最初から新様式で対応された方がよろしいと考えます。

Q15 個人番号の届出を郵送で行った場合に漏えい事故が発生するリスクがあるが、どのようにすれば良いか。
こちらは従前から電子申請による届出を推奨していますが、今回、郵便での届出を行う場合は書留郵便等、届出の履歴が確認できる方法での届出をするよう、追記されています。

最後に、「事業主による本人確認について(雇用保険関係)」(平成27年11月10日版)という文書の中で、身元(実在)確認用の書類として、
「公共職業安定所長が適当と認める書類」
という記述が追加されました。この具体的な内容は、国税庁告示第2号「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則に基づく国税関係手続に係る個人番号利用事務実施者が適当と認める書類等を定める件」で定められた書類と同様のものとすることを予定している、としています。具体的には、以下の書類が適用される予定です。
・写真付き社員証、写真付き資格証明書
・写真なし身分証明書(社員証、資格証明書等)、国税等の領収証書等、官公署から発行された本人写真ない書類等、のうち2つ以上

財務省における制度改正等の状況

財務省が所管する所得税法施行規則や租税特別措置法施行規則等が改正され、源泉徴収票や上場株式配当等の支払通知書などの「本人交付用」書類に限って、マイナンバーを記載しないこととなりました。これにより、従業員等に渡す源泉徴収票などは特定個人情報ではなくなるため、企業の安全管理措置の負担が減ることが期待されます。金融機関も支払通知書に顧客のマイナンバーを記載する必要がなくなるため、従来通り普通郵便等で書類送付が可能となります。なお、「税務署提出用」についてはマイナンバーを記載する必要があるので、ご注意ください。

総務省における制度改正等の状況

総務省が所管する地方税法施行規則等が改正され、市区町村が企業を通じて従業員に通知する税務関係書類(給与所得に係る特別徴収税額の決定/変更通知(納税義務者用)等)にマイナンバーを記載しない取扱いとなりました。これは、上記の国税における本人交付用の源泉徴収票にマイナンバーを記載しないことに合わせた措置としています。こちらの地方税関係書類もマイナンバー制度における特定個人情報ではなくなるため、「安全管理措置」を施す必要がなくなり、従来通りの取扱いとなります。ただし、事業者用の通知書にはマイナンバーが記載されるので、安全管理措置は必要となります。

次回は国税庁FAQの変更状況について確認します。
マイナンバー制度は今後もこうした細かな制度改正等が随時行われることが想定されます。担当される方々は随時関係省庁のマイナンバー関連情報を確認し、タイムリーに更新状況を把握することが必要だと考えます。

以降の内容はこちら
—>「マイナンバー制度、変更情報の確認(2)
—>「マイナンバー制度、変更情報の確認(3)

参考
・内閣官房、「マイナンバー社会保障・税番号制度

・厚生労働省、「マイナンバー制度(社会保障分野)
※このページから「雇用保険関係」「労災保険関係」のページにリンクします

・パブリックコメント:結果公示案件詳細「「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案」に対する意見募集の結果について

・パブリックコメント:結果公示案件詳細「租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号)等の一部改正について

・総務省、「地方税分野におけるマイナンバーの利用

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